トゥルー&
弱火でじっくりゆっくり煮詰めた自分と、熱々の油が飛び散るフライパンでサッと炒めた自分、あなた方の中でなにか違いがあるのだとしたら、心底落ち込んでしまう、どんな自分だって自分だ、全部認めてまとめて、必要としてくれはしないか、
そっと入水するように空へ着地した
空気がはるを帯びていた
まとった、のほうがただしいだろうか
こんなあやふやな世界に正しさなんて必要ないか
春の速度はとてもはやい
全てがすこし加速したスローモーションに見える
風がふく速度、人が歩くスピード
温度の上昇・下降
穏やかにはや歩きをしている季節
生き急ぐ群衆をさらに急かすように
絡まった糸が
ほどけて縺れるような
そんな
春に
揉まれている
全てから遠ざけられているよう
静かに呼吸をする
春風が呼吸音を消してくれる
ゆるやかな坂道 焦る花びら
鳥の群れや発情した狐が
春風の音を消した