トゥルー&

 

弱火でじっくりゆっくり煮詰めた自分と、熱々の油が飛び散るフライパンでサッと炒めた自分、あなた方の中でなにか違いがあるのだとしたら、心底落ち込んでしまう、どんな自分だって自分だ、全部認めてまとめて、必要としてくれはしないか、

 

そっと入水するように空へ着地した

 

空気がはるを帯びていた

まとった、のほうがただしいだろうか

こんなあやふやな世界に正しさなんて必要ないか

春の速度はとてもはやい

全てがすこし加速したスローモーションに見える

風がふく速度、人が歩くスピード

温度の上昇・下降

穏やかにはや歩きをしている季節

生き急ぐ群衆をさらに急かすように

 

絡まった糸が

ほどけて縺れるような

そんな

春に

揉まれている

全てから遠ざけられているよう

 

静かに呼吸をする

春風が呼吸音を消してくれる

ゆるやかな坂道 焦る花びら

鳥の群れや発情した狐が

春風の音を消した

 

 

 

友達・未来

終わりがきてしまうことを信じて疑わない、だから、終わりがきても大丈夫なように、終わりを想定した言葉を映像を残した  自分がいつ終わりを見ても、感じても、大丈夫になれるように予行練習している  つまり自分は終わりしか見ていない、正確にいうと、終わりがくることしか信じていない、ほかは全部あやふやなのでね、けれど、もし終わりが来たとして、大丈夫になる気はしない、多分、予行練習なんてなんの役にも立たない、予行練習は今の自分を大丈夫にするための愚行でしかない  人は人を殺す、それに気づいていない人たちは、とても幸せそうにしている、いや、殺していないのかもね、わからないけど、みんな誰かを殺して生きている、気づいてないから幸せそうにしている、人の幸せを千切っても、幸せになりたい、なんてことを簡単に言う、snsで同級生たちが幸せを披露している、あの子たちも人の幸せを殺したのかな、ほんの少しの希望を凝視した、   ぱひゅん と、間抜けで、だらしない風を起こして、消滅 まばたきをする感覚を 失った  外では鳥が鳴いていて、猫が走って逃げていく、部屋の中は映像みたいだった、箱に詰められているみたいだった、シルバニアファミリーのウサギの子どもになった、命が削れていく気がしない、進まない、どうしたらここから抜け出せるのだろうか、暗いところばかり見据えようとして目を細めた、とじた、見えていないほんの数秒になにが起こった?春の夢に合わせてナイフを振りかざす少年、脆すぎるなあ、みんな、みんな、思い出としてダンボールに押し込めるには、まだはやすぎる、退化した土壁みたいに剥がれ落ちる未来になる、剥落していく心、花屋に入って、回転寿司に行って、ゴミ捨て場の横で、喫茶店に入る、すべてと向き合っている、大丈夫だ、幼いころの自分をもみ消すみたいに、知識や色を増して、

呼吸を引っこ抜くみたいに覆いかぶさる、払拭、

大人になるねーぼくたちは、どこまでも

終わりに近づく

Nähe

世の中なんて知れば知るほど失望することばかりだ、きみにそんなことを知ってほしくない、きみの目を塞いで、いつのまにか陽だまりに連れ去ってしまいたい、落下する、どこまでも遠く狭い、窮屈な空や、凝固した大気、花びらが散る速度から、きみの手だけをひいて思いきって駆け抜けてみたい 走るのは苦手だ、けれどきみの手を取ってしまえば、どこにだって行ける、なんだって出来る、なんて最強の気分になってしまう 

やさしい線をなぞっても、

やさしい線にはならなくて

佇んでいる景色が無の音を立てて

静かな変形、忙しく形を変える

それは地獄だったかもしれない

 

指を遮った影がなんなのか、

そこから目を逸らして、いる

 

無味無臭、無色透明

溶けていく

言葉の濁流に襲われて

音の洪水に晒されて

街の喧騒に詰められて・・

でもあの街には、たしかにきみがいる

 

滑らかな衝動をかき消して

空を隠す暗闇に、明けそうな夜に

光る、電光掲示

眩んだ視界を統べるべき残像

 

祈る

 

プシューケーに映った夢

 

自分を傷つけるものはたくさんあって、それにちゃんと傷ついているし、ちゃんとそこを見ている、自分を傷つけるものや人、不安にさせる全ては、ちゃんと自分のことを見ていてくれているだろうか、ちゃんと、自分が傷ついているその一点だけを見つめていてくれるだろうか、多分そんなものは、ないし、そんな景色も、ない、そんな人も、いない、それが悲しくて仕方ない、傷つけるだけ傷つけて、不安になった俺をどうして見ていてくれないのだ、という気分になる、傷つけていることを知らないのだ、将又、傷つけているという意識すらないのだ、というのを、そのとき、改めて、認識する、何十こものそれを、じぶんは、ひとつも飲み込めない 飲み込もうとしない 飲み込もうとしないのに、苦しいものは自分のことを追いかけてきて、夢にまで出てきて俺を侵す 、それなのになんで知っていてくれないのだ、子供を怒鳴る親の目つきとか、転んだあいつの泣き顔、ゆっくりと落ちていく陽、サンキャッチャーに集められた光たちを見て綺麗だなと思う自分の心、枯れていく庭、生い茂っていく庭、コンビニの喫煙所でタバコだけ吸って帰る あの 顔、風に揺られる洗濯物、遠くでする家族の声、子供の笑い声、34パーセントの充電、知ってる?子を供えるって書いて子供なんだよ、言葉、行為、

 

自分しか知らないもので、自分しか知らない場所で傷ついて、一人で傷ついて、いる あっけらかんとしている、自分はずっと最低で、ずっとずっと最低で、傷ついていることを示したら傷つけてしまうこと、知っている、示さないこともまた、傷つけてしまうこと、分かっている、どこにも行き場がなくなってしまった、

 

世界のすべては自分の秘密であることを悟った小学六年生、中学三年生の頃、言葉でぶん殴った全てや、それを懺悔した高校一年生、見えなくなったものに気づかなかった高校二年生、

この世界には自分しか知らないもので溢れていて、風の音とか曇った空とか、きっと他人も知っていることを、じぶんだけが知っていると、錯覚する

もしかしたら、うつらうつら書いてきたこの文章たちも、誰かには、バレてしまっているのかも知れない、それでもいい、本当は自分だけが知っているものなんて無いのだろう、それがいい、自分だけが知っていると錯覚するのは苦しい 全部知っていてほしい

 

鉛のような鉛

もじというのはえいえんでかんじょうというものはえいえんである かいてもかいてもおわらない かんがえてもけつまつがない ぼくらにんげんはゆくすえがない じめんからいってきながれるあさひは とてももじにはならないだろう きみのこともとうてい、かんじょうにはならないだろう もじも、かんじょうも、 それとへいこうした なにかを かくしもっている すべては いきているということ しあわせというのは ほんとうはないものなんじゃないか いまはっきりことばになるかんじょうは ない それともことばとかんじょうのいっちができないだけなのかな、たぶんそうだな、